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98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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2017年01月15日
トンネルを抜けると、そこはきたえーるだった。
皆さまキックオフ2017、お疲れ様でございました。集いに集った4029人。開始時間も19時半と遅かったにも関わらず、この参加者数。相変わらずコンサドーレのサポーターは熱い方が多いなと思いを新たにした。
さて、笑いと歓声と生暖かいぬるっとした空気に包まれて大団円を迎えた今回のキックオフ。トークショーの部分が多数を占める異色のラインナップとなった。内容としてはメインMCを買って出た野々村社長の無茶ぶりに金山隼樹と荒野拓馬が必死になって付いていくも、マイペースな選手たちに振り回され結局グダグダという、いかにもキックオフらしい代物であった。
右往左往する彼らを見ながら、私は不思議な感覚に囚われていた。かつて2010年のベストアメニティースタジアムで感じたのと同じあの感覚。アウェイゴール裏に陣取る私の目の前に中山雅史が居て、絶妙な動き出しからヘディングシュートを狙ったあの瞬間。それと同じ感覚を背番号6が姿を現した時に感じたのだ。
兵藤慎剛。まだ彼が赤黒のユニフォームを着ていることが信じられない。中山の後も小野伸二、稲本潤一というビッグネームがコンサドーレのユニフォームに袖を通したが、その時には感じなかった「スゲー」というこの感じ。言い方は悪いが小野や稲本はビッグネーム過ぎて一周回ってしまっていたとでも言おうか、野々村社長のサプライズ報告もあったこともあり、妙にストンと受け入れられていたように思われる。今回の兵藤に関しては降って沸いた移籍話であり、新聞報道からあれよあれよという間に完全移籍となった。この変化のスピードに気持ちが付いて行っていないのだろう。
だが彼はここに居て、背番号紹介の時にはマリノス時代の大先輩である河合竜二の横に並んだ。馬場ちゃんの横にカッパが並んだのだ。より一層不思議な感じを覚える。Jリーグに興味を覚え、サッカー関連誌を読み漁っていた学生時代にマリノスを支えていた2人がコンサドーレに居る。…やっぱり夢じゃないだろうか。
つい先ほどのことだ。1日経ったにも関わらず狐につままれたようなフワフワした気持ちだった私は携帯電話を握っていた。通話口の男は何用であるか私に問うてくる。何者であるか答えた私は口が回るのに任せて用向きを伝えた。結果として、今季のユニフォームに入れるネームの変更依頼は成されてしまったようだった。…悩んじゃったなら仕方ないよね。濱ごめんよ。たぶん手元に届いても信じられないままだろう。選手たちにはこれから苛酷なキャンプが待っている。福森のBefore Afterを楽しみしつつ、2月25日の開幕を待つとしよう。
2017年01月14日
遅ればせながら、皆さま明けましておめでとうございます。また、本年もよろしくお願いいたします。
補強ポイントを検討したいと思うなどと大言壮語しながらも、すでに補強は終了し全体練習も始まっている。まして今日はキックオフの当日である。検討もへったくれもない。
なので、今季の補強の「感想」を述べたいと思う。結論から言えば、文句のつけようがないという言葉に尽きる。堀米悠斗の新潟への移籍は残念であるが、満額の育成費用と移籍金を得ることができ短期的に見ればwin-winの移籍となっている。加えて彼の穴埋めとして一昨年のJ2クロス2位、田中雄大をJ1ヴィッセル神戸から獲得しており、穴は埋まったもしくはスケールアップしていると考えられる。それ以外の主力の離脱は見られず、まさしく補「強」となっているという印象だ。
CFWである都倉賢のライバルとしてJ1通算27得点を挙げている実績充分の金園英学をベガルタ仙台から、2列目ならどこでもこなせる早坂良太はサガン鳥栖から、コンサ躍進の屋台骨として獅子奮迅の活躍を見せた増川隆洋の代役として大宮アルディージャから横山知伸を期限付きで獲得した。加えてクソンユンとリオ五輪を戦った大型ボランチのキムミンテもベガルタ仙台から、国外での注目度はNO1、タイのメッシことチャナティプ・ソングラシンも7月から加入する見込みだ。前回昇格した2012年シーズンは3位での昇格ということもあり補強が急務であった。にもかかわらず1年かけて育て上げた山下達也が移籍してしまい、終盤の快進撃を支えたジオゴも退団したことでセンターラインに課題を抱えてしまった。この穴を埋めきれずにあえなく1年でJ2に降格。このような印象だ。まともに戦力になったのは清水エスパルスから移籍してきた山本真希ぐらいではなかったか。その二の舞になるまいと強化部が入念に調査し口説き落としてくれた結果が表れている。
そしてなにより忘れてはいけない男がいる。兵藤慎剛。名門横浜Fマリノスでバリバリのレギュラーを張り、中心選手として活躍してきた男がトリコロールのユニフォームを脱ぎ、赤黒縦縞に袖を通すことになったのだ。…夢でも見てんじゃないかな。モンバエルツ体制になり冷や飯を食ってはいるが、実力は折り紙付きだ。奇しくもコンサドーレには、彼と同じくフロント主導の世代交代の煽りを食った河合竜二という大先輩がいる。プレーした期間も重なっており違和感なくチームに溶け込めるはずだ。そう、今回移籍してきた選手はそれぞれ共通点がある。兵藤と横山が早稲田大学の同級生、田中と金園は関西大学の同級生、早坂はサガン鳥栖で菊地直哉とプレー経験あり、キムはそれこそリオ五輪をクソンユンとともに戦っている。勿論彼らはプロであり新しい環境に溶け込まなくてはならないのであるが、それでも知った顔があるという安心感は何物にも代えがたいだろう。ここまで計算してオファーを出していたとしたら脱帽ものである。
三上GMは今季のフォーメーションを「5バックにならない」3-4-3を考えていると述べている。昨年は主に3-5-2を用い、守備的になると5-2-1-2ととれる5バックに移行することが多かった。目標勝ち点を40とするなら10勝10分け14敗という星勘定になるため、5バックではカウンターの精度が余程高くない限り現実的ではない。そう考えると中盤をトリプルボランチとした3-3-1-3、間の3-1を4と勘定すれば3-4-3になる、を想定しているのではないだろうか。そこで主観が入りまくっているが、新年の賑やかしと思ってお目汚しを失礼したい。
'2017年 予想フォーメーション
都倉賢
ジュリーニョ 早坂良太
ヘイス
深井一希 宮澤裕樹 兵藤慎剛
福森晃斗 横山知伸 菊地直哉
クソンユン'
…どうですかね?ヘイスがボールキープしてくれれば押し上げが効くと思うんですよ。3ボランチにしたことにも理由がありまして、鹿島を始めとして4-4-2を採用しているチームが6チームあり、中盤のスペースに出たり入ったりする選手を捕まえやすいように3人並べてみたんです。3人並べることでスペースを消すこともできるし…。この3人で相手の攻撃にフィルターをかけて、そこで奪ったボールをヘイスに預けてそこからカウンター。イメージは石崎体制での柏レイソル、そのフランサ役をヘイスに担ってもらえれば最高かな。
このような落書きができるくらい今年の補強は夢が広がる有意義なものだ。目標はあくまでJ1残留。今日選手たちはそして野々村社長は何を語るのか、それを楽しみにして筆を置きたいと思う。
2016年12月03日
さて、前回の記事では2016年新加入選手がどのように戦力となりえたか、また若手選手の活躍による戦力の底上げについて触れた。そこで今回はざっくりと2016年のチーム戦術について振り返りつつ、来季への課題について考えていきたいと思う。
何といっても今季のベースは堅守を誇ったクソンユン、増川隆洋を中心にしたDF陣だ。無失点試合は20試合。過去J2優勝を果たした2001年、2007年とも無失点試合は20を超えており、データ通り優勝しての昇格となった。ただ彼らの仕事は「守る」だけではない。そう、彼らが攻撃の起点となったことで、前線に陣取る都倉賢やジュリーニョらFW陣の爆発につながったのだ。左CBの福森晃斗は言うまでもなく、中央に陣取る増川、そしてシーズン途中にサガン鳥栖からレンタル移籍で加入し右CBとして定位置を確保した菊地直哉、彼らのフィードから数多くのチャンスが産み出された。どうしんウェブコンサドーレJ2優勝特設サイトに掲載されている吉原宏太氏へのインタビューの中でもこの点に言及されている。以下に内容を引用させていただく。「福森選手の左足の精度は説明不要ですが、増川選手も菊地選手も、長い距離で正確なボールを蹴ることができます。そうなると、慌ててボールを奪いにいかなくても、一歩下がって相手に合わせながら、じっくり守ることができるため、守備も安定します。」
これを裏付けるデータがある。たびたび参考にしているFootball LABに掲載されている9月8日付のコラム、「北海道コンサドーレ札幌・首位を走る原動力は」で紹介されている「タックルのエリア比率とボール奪取ライン」のデータがそれだ。タックルをしたエリアを見てみると、ディフェンシブサード(ピッチの全長を3つに分割し、自陣に最も近いエリア)での比率はリーグでも最も高い60.1%。2位が56.4%で讃岐、3位は55.2%の横浜FC、ようやく5位に54.2%でセレッソ大阪が顔を出してくる。また、ボールを奪取した平均位置ではゴール前から32.3mとほぼディフェンシブサードとミドルサードの境目にあたる。これはJ2で4番目の低さである。これは1位が讃岐の30.8m、2位が北九州で31.8mと押し込まれているチームが上位を占める結果となっているが、その中に首位のチームが加わっているのは異様に映る。しかし、下位チームと違う点が自陣PA内での空中戦の勝率だ。勝率57.2%と押し込まれても増川を中心としたDF陣が最後に攻撃を跳ね返すことができた。押し込まれたところでボールを奪取し、前線へロングフィード一発。敵陣に攻め残っている状況がカウンターの餌食に最もなりやすいのは自明の理だ。この効率的でシンプルなカウンターの起点となったのがDF3人衆だったというわけだ。
また、氏は「適当にクリアすることも少なかった。『一つのクリアは、10本のパスをつなぐ機会を失うのと同じ』という言葉があります。ビルドアップが下手なチームは守る時間が長くなり、失点も増えます。」と今季の奮闘ぶりを讃えながらも、今後J1で戦ううえで重要なポイントも浮き上がらせてくれた。いかにJ2でできたことをJ1でも同じように行うか。これが今後の課題になってくるだろう。
攻守の「守」の部分に目を向けてきた。であればこちらもカウンター。福森からのフィード受ける「攻」の部分を掘り下げていくとしよう。先ほども触れたが、今年のコンサドーレの基本スタイルは「堅守からのカウンター」と言える。どこのチームも突き詰めれば「堅守からのカウンター」となるのだが、今年はその精度が高かった。それを示しているのがリーグ2位の得点数であり、二桁得点者3名というチーム史上初となる快挙達成である。開幕前に漠然と思っていたのが、前線のFW2人が合わせて30点取れれば昇格できるかなという夢物語だった。2人合わせてというトコロがミソで、誰かスペシャルな点取り屋が爆発するのではなくコンスタントに2人して得点を重ねていく点を重要視していたのだ。そしてこれが叶ってしまった。都倉19点、ジュリーニョ12点、内村11点、ヘイス7点…。チーム編成に携わった三上GMもこれほど上手くいくとは考えなかったのではないかと思うほどだ。この得点源の分散は無論いい面に作用する。序盤から快調にゴールを積み重ねてきた都倉が、9月11日の群馬戦から11月3日まで7試合2か月近くゴールから遠ざかってしまう。その間の成績は2勝2敗3分け。エースの不調とともにチームの成績も低迷してしまったが、その中でもヘイス2ゴール、ジュリーニョ2ゴール、内村1ゴールとドロー沼に入り込むことなく勝利をもぎ取ることができた。やはり大きかったのはジュリーニョの加入。彼のおかげで故障明けの内村をベンチに置くことができ、ベンチワークの選択肢を増やすことになった。内村本人としては全試合先発出場を目指していたと思うが、ベンチに置かれることで負担軽減にもなり結果として全試合出場につながったのではないだろうか。
ここでもFootball Labのデータを参考に今年のコンサドーレの攻撃面を客観的に見ることとしたい。開幕前から野々村社長がこだわっていた「ゴール前のクオリティ」、これがどのように改善されたか。そこを「チャンス構築率」・「1試合における平均ゴール数」,「シュート数に対するゴール決定率」、「総ゴール数」の4つの数字から確認することにしよう。
年度 チャンス構築率 平均ゴール数 決定率 ゴール数
2013 10.4% (9位) 1.4 (6位) 9.5%(7位) 60 (7位)
2014 9.7% (12位) 1.1 (14位) 8.4%(11位) 48 (15位)
2015 10.9% (3位) 1.1 (7位) 7.8%(11位) 47 (8位)
2016 10.7% (5位) 1.4 (3位) 10.8% (2位) 65 (2位)
※()内はリーグ順位
J2で戦った近4年のデータを列挙したものが上記のデータになる。チャンス構築率の高さの割にゴールに結びつかなかったここ数年の苦闘が数字から見て取れる。昨年と比較して飛躍的に伸びているのはやはり「決定率」。3%の向上というのは簡単にできることではない。チャンス構築率を維持したまま、「ゴール前のクオリティ」を上げることができた、その証左である。最後までプレーオフ圏内を争っていた2013年は比較的今年と似たような数値が出ている。ただこの年はイチかバチかというところがあり、引き分けに持ち込めず負けてしまう試合も多かった。その点から攻守ともに秀でていた今年のチームはやはり優勝チームにふさわしい成績を収めたと考えられる。そしてこの「決定率」向上に貢献したといえるのが、都倉賢・内村圭宏・ジュリーニョのコンサドーレ史上初3名の二桁ゴーラー達だ。
都倉賢。1986年生まれ、30歳。187cmの体格を活かしたポストプレー、フィジカルの強さを生かした長身から繰り出すヘディングと左足でのシュートが武器。今季19ゴール、7アシスト。J2ゴールランキング2位。決定率15.1%。(昨季10.7%)
内村圭宏。1984年生まれ、32歳。スピードに乗ったドリブルとDFラインの裏をつく飛び出しから得点を量産するストライカー。今季11ゴール、2アシスト。J2ゴールランキング19位タイ。決定率16.2%。(昨季11.5%)
ジュリーニョ。1986年生まれ、30歳。独特のリズムに乗ったドリブルで相手ディフェンスラインを切り裂くドリブラー。今季12ゴール、3アシスト。J2ゴールランキング13位タイ。決定率15.8%。
彼らなくしてゴール前での精度改善はならなかった。そして彼らの存在が「堅守速攻」の軸にもなっていた。その根拠となるのは「ボール支配率だ」。ポゼッションサッカーが持て囃される様になって久しい。そんな中、今季のコンサドーレの支配率は50.3%。これがどの程度の位置にいるのかと言えば、22チーム中10位である。トップのレノファ山口で57.2%。昇格のライバルとなったセレッソ大阪が53.4%で3位。爆発的な攻撃力で2位に滑り込んだ清水エスパルスが51.8%で6位となっている。比較的相手にボールを持たれているコンサドーレが強みにしていたのが、パスの成功率である。少し前のデータになるが数値は75%を超え、上位4チームに食い込んでいる。カウンター攻撃の成功は前線の選手がカギになる。このパス成功率の高さは前線で頑張る彼らが的確にボールをキープしてくれた結果だろう。
このカウンターが手詰まりになってしまった時、チームを救ってくれるのがセットプレーだ。今まで攻守両面で弱点となっていたセットプレー。今季はこれが劇的に改善された。「守」では増川隆洋。「攻」ではそう、福森晃斗だ。直接FKで3点、そしてアシストは10と彼の左足から13ものゴールが産み出された。川崎フロンターレから完全移籍が秒読みとなっている若きレフティーの存在はチームの浮沈を左右するまでに高まっている。最終戦の消化不良は彼の不在に端を発したとも言えるのではないだろうか。
キーマンの不在がチームの低迷につながる。このチームの好不調のバイオリズムをいかに一定に保つか。来年J1を戦うにあたって重要なのはその点に尽きる。今年はボランチの不在に悩まされた。稲本潤一の離脱。クラッシャーとして獅子奮迅の活躍を見せた深井一希も勝負の夏場に離脱してしまった。深井の離脱とともにアウェイで引き分けることが増え、そしてあの崩壊を招いてしまった。ボランチがフィルターとして攻撃の芽を摘んでいたからこそ、ウノゼロでの5連勝を成し遂げることができたのだ。そう、まだまだコンサドーレの選手層は薄い。J1に残留、定着するにあたってチームのスケールアップは欠かすことはできない。
引用させていただいた吉原宏太氏は、来年J1を戦うにあたり「今シーズンやってきたパスサッカーが出来れば、ある程度は通用すると思います。」と今季のチームの完成度について評価していた。そのうえで「ただ、ゴールを決めるべきところで、しっかり決められるようにならないと駄目ですね。」と釘を刺す。前回J1を戦った2012年は25ゴールにとどまり、あっけなく降格してしまった。ゴールを奪うことができれば勝ち点3はグッと近づく。そこで次回は各ポジションを見直し、補強ポイントを検討したいと思う。
2016年11月23日
まずは皆さま、J1昇格、ならびにJ2優勝おめでとうございます。…おめでとうございます!最終戦の試合内容には触れません。ええ、触れませんとも。むしろ、あんな稀有な試合を見ることができたことを喜ぶとしましょう。得難い経験をしたと。昇格と優勝を決める試合を見れただけで眼福じゃないですか。そうですとも。…そう自分に言い聞かせたところで、無駄に対戦相手を分析したり、アジッてみたりと駄文を書き散らかしてきた当ブログらしく今回と次回は2016年シーズンの振り返りと2017年シーズンに向けての展望なぞを述べていきたいと思っています。
25勝10分7敗、勝ち点85。得点65、失点33、得失点差32。北海道コンサドーレ札幌が2016年シーズンに残した結果である。2位清水エスパルスとは勝ち点1差とはいえ、優勝でJ1昇格を決めた。得点65は85点のエスパルスに次ぐ2位、失点33は30店の松本山雅FCに次ぐこちらも2位と高いレベルで安定していたことが昇格の要因となった。
コンサドーレは比較的守備をベースにチームを組み立てている。降格した2013 年は最小失点である長崎の40点に対し49点で8位。翌14年は5位、昨年は11位。大崩れはしないものの肝心なところで踏ん張れず、失点を喫してしまう。昇格したチームがことごとくコンサドーレより失点を喫していないことが、勝負弱さを浮き彫りにしている。
「2点取られても3点取れば勝てる。」これも自明の理である。しかしコンサドーレは点が取れない。降格初年、ガンバ大阪旋風が吹き荒れた。99ゴールを記録したガンバに対しコンサドーレはそれでも健闘し、60ゴールで7位。しかし、それ以降は点が取れず得失点差が一ケタに収まる都市が続く。14年は15位、16年は8位。14年が顕著だろう。失点はプレーオフ圏内の5位にも関わらず、得点は15位。これは結果に如実に表れ15勝13敗14分でプレーオフ圏内と勝ち点5差の10位。引き分けた試合のいくつかを勝利に変えていればと悔やまれるシーズンだった。これは無論13年15年にも言えることであるが、「勝ちきれない」これが近年のコンサドーレに付き纏う宿痾になっていた。
野々村社長は双方の課題を克服するために「パッチ」を充てることにした。「大巨人」増川隆洋とブラジル人トリオの加入である。
名古屋グランパスを初のJ1優勝に導いた増川の加入で、昨年の主な失点パターンとなっていたクロスからの失点が12点から4点まで減少した。もっともクロスを上げられた回数そのものに変化はなかった。1試合平均で15年は13.9本、16年は14本と大差はない。ゴール前に経験豊富なセンターバックが加入したことで、クロスを跳ね返すことが可能になった。加えて、両サイドに控える進藤亮祐・福森晃斗ら経験の浅い選手に対する現場監督としてその経験を余すことなく伝え成長を促してくれた。これもまたベテラン獲得のメリットだろう。
翻って攻撃陣だ。「ゴール前のクオリティー」この向上が至上命題となっていた。クロスの精度向上のためマセードを獲得し、ストライカーとしてヘイスを、そしてサイドからテクニックを活かしたドリブル突破を期待してジュリーニョを獲得。マセードは期待通りの活躍で、すぐに定位置を確保し豊富な運動量と精度の高いクロスで得点機を演出した。意外だったのがジュリーニョだ。サイドではなくトップ下として定位置を確保。変幻自在のポジショニングで相手を幻惑し、あれよあれよとハットトリックを含む12ゴールを挙げた。ヘイスもコンディション不良が続きなかなか出場機会に恵まれなかったが、勝負どころとなる夏場に本領を発揮。貴重なゴールをあげコンサドーレを再び上昇気流に乗せた。彼らがそろって離脱した後半戦に失速し、松本・清水に追いつかれる体たらくを演じてしまったのも彼らがいかに重要な戦力となっていたかの証左であろう。
補強が当たり、まさしく「補強」となったことが昇格の一因になったことはご理解いただけただろう。だが、それだけでは優勝をつかみ取ることまではできなかったはずだ。そう、戦力の底上げ。若手選手の台頭があったのだ。シンデレラボーイといえば、背番号35、進藤亮祐の名前を挙げねばならないだろう。開幕スタメンを勝ち取り、足の裏でアシストをしてしまうファンタジスタに僕らは狂喜した。その勢いに乗せられるかのようにチームの成績も上昇し、5月4日のツェーゲン金沢戦に勝利しJ2首位に躍り出た。その進藤起用の理由を四方田監督は優勝特番に出演した際にこう話していた。「キャンプを通じてアピールを続けていた」「今年のコンセプトとしている『チャンスがあれば後ろから仕掛ける』という形をトレーニングから実践してくれた」「どんな選手にもチャンスがあるんだというところを示すために起用し続けた」、要点をまとめるとこのようなところだ。進藤のアピールも勿論だが、ある程度チームの活性化も見込んでの起用であったことがうかがえる。実際今年の若手の成長は目覚ましく、進藤をはじめボランチとして獅子奮迅の活躍をした深井一希、左サイドで輝きを放った堀米悠斗、ケガに苦しんだが最後の最後にいいところを持って行った荒野拓馬、忘れてはならないチーム最年少出場記録を更新した菅大輝。彼らの活躍なくして今シーズンは語れない。
一方で、若手の登用はしばしば「重用」につながる。傍から見れば当然とも思える世代交代も、プレーする選手にとっては理不尽に感じるところもあるだろう。某名門チームが数年ごとにフロント主導の世代交代を行い、選手・サポーター双方から不興を買っていることは他山の石とは思えない。このあたりを四方田修平監督は積極的なコミュニケーションと気配りで解消した。ユース出身では最年長の石井謙伍やディフェンスラインを束ねる増川隆洋などを先発起用から一転ベンチ外とする際には、なぜ外すのかについて細かく丁寧に説明をしたうえで納得・理解を得る様に心がけたと新聞各社が報じている。この心配りがチームの一体感を産み、若手選手の遠慮することなく伸び伸びとプレーすることができたのだと思われる。そしてキャプテンとしてチームをまとめた宮澤裕樹の成長も大きかったようだ。優勝特番に出演した四方田監督も彼の成長を評価し、今シーズンのMVPだと讃えていた。
ここまで長々といかに今シーズンが素晴らしかったかを述べてきた。というより述べ足りない。目の前で「フクアリの奇跡」を目撃し号泣した身としては、まだまだ歓喜に浸っていたい。だが、そうもいかない。月日は流れていく。今日にもCS第一戦、川崎フロンターレVS鹿島アントラーズが開催される。彼らと来年は勝負し、勝ち点を積み上げなければならないのだ。14時からの試合を観戦し、レベルの違いに頭を抱えるとしよう。さて次回は戦術面の振り返りとJ1残留に向けた現状の確認をしたいと思う。なるべく早く更新する予定ではあるが、気長に待っててくださいな。
2016年11月20日
久しぶりのエントリーである。肝心な負けが込んでいるときに記事を書かずに、今更書き込むのかとお叱りを受けるのは百も承知だ。だが書かざるを得ない。今日決まる。泣いても笑っても今日決まるのだ。
負ければプレーオフ、負ければ降格。これほど痺れる試合があるだろうか?まさしく天国と地獄。両者明暗くっきりと分かれる天王山。ここまで来れば両者を分かつのはただ一つ、「気持ち」である。この違いを我らは目の当たりにしたであろう。前節のジェフユナイテッド千葉戦。後半アディショナルタイム5分過ぎ。そこに神は居た。諦めず、愚直に、「お前だけはゴールを狙ってくれ」という言葉を信じて走り込んだ。両脚を攣ろうとも走り続けた男が居た。声の限り鼓舞し続けた男が居た。その姿を力に変えピッチに立ち続けた男が居た。チームの勝利を信じ、声を嗄らし続けた者たちが居た。
気持ちである。勝利を信じ、声を嗄らし、走り続け、ゴールネットを揺らす。巧拙の議論を待たない、泥臭く、愚直に、結果を追い求めた結果が結実するのだ。5年ぶりだ。あるいは9年ぶりの歓喜の時だ。遠慮はいらない。勝負は一瞬。万感の思い、溜め込んだその思いを一瞬の力に変える時が来たのだ。腹の底から、メインだ、バックだ、ゴール裏だ、カテゴライズはどうでもいい。ただコンサドーレが好きだ、その気持ちを爆発させよう。
90分先の未来を悲観するのは止めにしよう。目の前の試合に向き合ったから前節の結果があったのだと、私は思う。ただただ一瞬一瞬に向き合い、狂喜乱舞し選手と感情を共有し合った時、最良の結果を得ることができる。溜息を吐く場面が多い試合になるだろう。だが、声援が絶えることはない。拍手が鳴りやむことがない。そんな3万人を超える観衆が居れば、昇格、そしてJ2優勝は難しいことではない。
一騎当千。一意専心。皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ。悔いのない一戦としたい。明日は月曜日?だから何だ?明日をも知れぬ彼らのためなら、声帯の一つや二つ惜しむことはあるまい!?
試合開始前の声援一発。度肝を抜く声援をドームに木霊せようじゃないか!
2016年08月24日
ミラーゲーム。両チームが同じフォーメーションで対戦している状態のこと、そのような試合のこと。京都サンガ石丸清隆監督は首位北海道コンサドーレ札幌相手に前節の4バックから3バックを採用し、全体がマッチアップする形で試合に挑んだ。これにはある一定の成果があり、京都MF本多勇喜も「今日はほぼミラーゲームだったので、一対一で負けなければ問題はなかった。そこはやらせなかったと思う」と手ごたえを口にしている。石丸監督としてはこの試合の入り方に対し、「札幌が)先制点を取ると90%以上勝っているというデータからすると、初めのうちに失点するとかなりしんどくなる。ゲームプランとして「やられない」というところからスタートした。」とまず主導権を奪われないようにと安全運転を心がけたと試合後のインタビューに答えていた。
とはいうものの、石丸監督の手ごたえとは別に試合の主導権はコンサドーレにあったように思われる。特に前半のシュート本数はコンサドーレ4本に対し、サンガは2本。ボールポゼッションはサンガ42.9%に対し、コンサドーレは57.1%とコンサドーレがボールを保持する時間が長かった。しかし、この時間を無失点で凌ぎ切るというのがゲームプランだったのだろう。…あくまで石丸監督の。
先ほど引用した本多勇喜のコメントには続きがある。「そこはやらせなかったと思うが、手応えがあるのはそこだけ。」エスクデロ競飛王はもっと辛辣だ。「前半を0-0でいけたのはいいけど、後半はもうちょっと「点を取りに行くんだ」という気迫が必要だった。追越しが遅かったり、3人目の動きが全くなかったりとか……。僕とゴメ(堀米 勇輝)で崩している時も、もっとほかの選手に絡んでほしい。後ろが(失点)ゼロで抑えていることは評価に値すると思うけど、サッカーは守るだけじゃない。攻撃しないと勝てない。」と攻撃に関してチームの連動性がないことを嘆いている。ゲームプランを遂行しようと選手が心がけた結果が5バックでは情けないではないか。勝ち点差12離れているとはいえプレーオフ圏内の5位に位置するチームだ。まして相性のいいコンサドーレ、そしてホーム西京極。もっと積極的に攻めても良かったのではないかと思ってしまった。首位から勝ち点3を奪うことができれば、勝ち点差も9に縮まり波に乗り切れなかったチームにも勢いが付く。石丸監督は「引き分け狙いではなく、その中で勝機は絶対にあると思っていた。」と逃げ腰で3バックを選択したわけではないと弁明に追われた。だが、こうも口にしている。「(札幌の)3トップがかなり強烈なので、うちの4バックのスライドと前線からのプレッシャーが間に合わないかなというところで、3バックを敷くことを選択した。」これは明らかにチームの力不足を認め、クリンチ寸前のミラーゲームを挑まざるを得なかったと監督として責任を認めていると見て取れる。
5バックを敷き、スプリンターがいるわけでない京都攻撃陣は脅威が半減していた。3バックの中心として対応した増川隆洋は、相手のカウンターに対応できたかという質問に対し、「そこは注意していたし、僕の役割はそこがメイン。周りの選手が上がる傾向があったし、ボランチと連係してリスクマネジメントすることは常にやっていた。」と守備連携の深まりを感じさせた。そのうえでキーマンとしてエスクデロ、堀米、イ・ヨンジェの名を挙げ、守備陣のリーダーとして上手く対応できたと胸を張った。エスクデロの感じたチームの問題点が露呈した格好だ。
この京都に対し無失点で終わってしまったことは改善しなければならない。決して驕りではない。これは横浜FC戦で手痛い敗北を喫してしまったことの延長線上にある。再び増川のインタビューから引用すると、「後ろから見ていると、(攻撃で)最初のボールは入るけど、そこからのつながりはなかなかうまくいっていなかった。」「向こうのファーストディフェンスはそんなに来なかったので、後ろではゆっくりとボールを持てたし、配球もできていた。」そう、ベタ引きに対しどのように崩していくべきか。これがこれからの課題になる。
京都戦は山瀬功治や堀米勇輝といった両サイドアタッカーに対応するため、攻守両面にバランスの良い堀米悠斗や荒野拓馬をスタメンに起用した。しかし、5バックを敷く京都に対し裏への抜け出しが持ち味である彼らでは、局面を打開するには至らなかった。事実、後半開始から投入されたマセードは自分のポジションである右サイドにこだわることなく、中央に切り込み配球役も務めて見せた。この交代策は四方田修平監督も狙い通りだったようで、「後半はマセードを入れて組み立てのところでボールが動くようになり、少しチャンスを作れるようになったと思う。」「後半の内容に関してはポジティブにとらえている。」と前を向いた。Football LABのデータを見たところ、枠内シュート率以外はコンサドーレの指標が良かった。にも関わらずアタッキングサードと呼ばれる30mライン進入に関してサンガ34回に対し、コンサドーレ38回と大差がなかった理由をコンサドーレ宮澤裕樹主将の言を借りて述べるとすれば、「ミスからの自滅が多かった」この点に尽きるだろう。たびたび引用している増川は「サイドからどうやって入り込めるか。勢いがあるときはいいが、引かれたときに難しい。それができる選手が揃っているのであえて言いたい。まだまだこんなレベルじゃ満足しちゃいけない。」と危機感を口にしていた。
そう、まだまだ足りないのだ。2位松本山雅FCと勝ち点差6しかない現状ではまだ足りない。J1昇格を一刻も早く手中に収め、天皇杯を来シーズンの予行演習にするぐらいの余裕と打開力を身に着ける必要があるということだ。…意訳しすぎかね?しかし、もどかしい試合であったことは確かだ。サイドプレーヤーにはより一層の奮起を期待したい。特に奮起を促したいのが、燻ぶっている神田夢実だ。独特の感性で突っ掛けるドリブルは荒野や堀米には無い武器だ。6失点しアウェイに乗り込んでくるロアッソ熊本は、相手に合せ様々なシステムを併用してくる変幻自在なチームだ。今節もミラーゲームを挑まれる可能性は充分ある。無論、中1日という強行日程で27日に天皇杯1回戦があり、神田としてはそこをラストチャンスと捉えコンディションを整えているかもしれない。だが、今のメンバーに割って入れるような練習でのアピールを期待している。熊本戦に向けてどの程度メンバーを弄ってくるのか。四方田監督の手腕が問われる連戦が続く。
引き分けで勝ち点1を分け合ったのは残念であるが、日が沈んでも30℃を超える蒸し暑いコンディションの中よく戦ったと選手たちを褒めたい。上位陣がコンサドーレに付き合ってくれたおかげで、熊本戦の結果次第では2位松本に勝ち点差9を付けJ2優勝に向けて独走態勢を築くことが視野に入ってきた。あわよくば首位から勝ち点をと自陣に引きこもるチームは今後も増えるだろう。そこをいかに崩していくか、目を離すことができない暑い夏は終わらない。
2016年08月21日
1勝1分け10敗。鬼門。春先に日本平で使ったこの言葉をまた使うことになるとは…思っていた。京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場。なぜか夏場に日程が組まれることが多く、文字通り熱い戦いが繰り広げられている。なにかとキーポイントになることの多い夏場のアウェイではあるが、京都戦は特に印象深い試合が多いように思われる。個人的に印象深いのは前回昇格した2011年の西京極。前半押せ押せムードで若手主体の京都を翻弄し、勝ち点3は間違いないだろうとテレビの前で油断しきっていた。そこから後半のみで0-4.そしてここから連敗し、迎えたのが昇格を争うライバルの徳島ヴォルティス。天国と地獄を味わう夏となった。
そんな熱戦の幕が今、切って落とされようとしている。19時キックオフだ。現地に赴かれる方のご多幸を祈念したい。といったところで、近5戦の京都サンガFCの試合を振り返ってみたいと思う。
後半戦のみの順位
01位 札幌 △△○○○○●○ 勝点17 +9
07位 京都 △●○△△○△○ 勝点13 +3
上位陣星取表
札幌松本桜大京都岡山町田清水山口
札//○●○△○ー○△ー●○○○○26(残2)
麿ー●●ー▲○//ー△○△○ー○△16(残4)
まずは参考までに、後半戦のみの順位と星取表をご覧いただきたい。後半戦のみの順位で行くと京都は7位。3勝1敗4分けとなっており、近5戦では2勝3分けと無敗で来ている。総得点は7、失点は4、ここ3試合は無失点と守備も固まってきている。25節のレノファ山口戦は先制されたものの、すぐに同点に追いつきシュート数も20体14と圧倒し、アウェイの地で貴重な勝ち点1をもぎ取った。だが、関西ダービーとなった26節のセレッソ大阪戦では悪夢に見舞われる。0-0で迎えた後半18分の菅沼駿哉のゴールから5分間で3ゴールを決め、1万人を超える観衆を飲み込んだホーム西京極を歓声で揺らす。が、悪夢は後半アディショナルタイムに待っていた。30分31分と立て続けにゴールを割られ、左サイドで奮闘していたMF山瀬功治をDF内田恭兵に交代するなど逃げ切りにシフトしていたにも関わらず、最後の最後にセレッソ大阪FW杉本健勇にこの日2ゴール目となるヘッドをぶち込まれジ・エンド。ライバルから奪い取れるはずの勝ち点3は露と消えた。
勝ちきれなかった2試合を糧にしたのか、その後3試合で無失点の2勝1分け。だが、後半戦未勝利のモンテディオ山形に0-0の引き分けはアウェイの地とはいえ、「取りこぼし」と捉えざるをない。勝ち星を積み重ねてはいるものの、エスクデロ競飛王や堀米勇輝などの個人技による中央突破から「なんとなく」ゴールが生まれている印象だ。以前の様な「右SBの石櫃洋祐からのクロス」というほど明確な武器は今の京都には見られない。目につくのがアンドレイ、エスクデロ、堀米という中盤3名のパス交換だ。特にアンドレイは攻撃のスイッチを入れる選手のようで、彼がボールを預けるエスクデロは4ゴール9アシスト、堀米はチーム得点王の6ゴール8アシストを記録している。アンドレイ自体も186㎝の堂々たる体格を活かし、空中戦でも無類の強さを誇っている。コンビを組む佐藤健太郎も177㎝と長身であり、32歳と円熟味を増したプレーで攻め上がりがちな山瀬・堀米の両ワイドとのバランスを取っている。
とはいえ、京都は守備からリズムを作るチームではないように思われる。なぜそう思うかといえば、無失点で「切り抜けた」ここ3試合を見ていても守備の粗さが見えるのだ。基本的に相手ボールになったらリトリートしてラインを整えるのが約束事なのだろう。27節の東京ヴェルディ戦後の石丸清隆監督へのインタビューの中で、「しっかり守備をしてからゲームに入ろうというところで、コンパクトな陣形を取りながら我慢強くゲームを運べた。」「基本的には、今日は相手に持たせていた感じ。(中略)スリーラインもきれいに保てていた。」とボール狩りよりもラインコントロールを重視して守備を組み立てていることがうかがえる。先制点を奪うことができればいいが、試合の入り方を間違え相手に主導権を渡してしまうと途端に苦しくなる。石丸監督もそれを認めているようで、0-0に終わった28節モンテディオ山形戦後のインタビューで、「ゲームの方は、前半はちょっと相手のボール回しというより、自分たちが引き込んだイメージがありますし、若干主導権を取られた中でゲームを運んでしまったので、かなり苦しい時間が続いてしまったのは少し残念です。」「前半からもう少し自分たちからアクションを起こしてボールを取りに行くようにやっていかないと、体力も奪われますし、自分たちで首を絞めたなというようなゲーム展開になってしまったのは少し残念でした。」と受け身になった時の弱さを吐露している。ラインを整えコンパクトな陣形を整えるのはもちろん大事だ。だが、京都守備陣のスライドやプレスのかけ方を見ていると前回対戦した時と大差がないように思われるのだ。無失点で終えられたのも、相手のゴール前での精度の低さに助けられたのではないかと。
決して貶めているわけではないのだが、3連勝以上がなく9試合負けなしで勝ち点23を荒稼ぎし上位戦線に殴り込みをかけた後に2連敗を喫するなど波に乗り切れていない今季の京都を見ていると苦言を呈したくなるのも事実だ。おそらく2011年のコンサドーレが傍から見ればこのような状況だったのだろう。
京都の攻略としては、ゲームの主導権を握ること。例年のように日が落ちても残暑が残り過酷な試合環境になることは間違いない。だからこそ、前半のうちに出足の早いコンサドーレのサッカーで京都守備陣の粗さを突き、先制点を挙げたい。ビハインドになれば京都はバランスを崩して攻めに出ざるを得ず、さらに綻びが生まれてくるだろう。そこをこじ開けていけば春先の対戦と同じく複数得点での勝利が見えてくるはずだ。詰まる所、いつも通りに試合を運ぶことだ。
そのうえであえてこの試合の見どころを述べるならば、前半15分までと後半30分過ぎからだろう。前半はどちらがゲームの主導権握るか、後半30分からはどちらの「精神力」「集中力」「監督力」が上回るかベンチワークも含めて目が離せなくなりそうだ。…改めて書き出すとどの試合もそうじゃないか。…まぁいいか。なんにせよ!手に汗握り、心臓に悪いシーンが展開されるものと覚悟している。足が止まりそうになる選手たちに知らず知らずテレビの前で声が出てしまうだろう。背番号12番は彼らを支えることしかできないのだ。さぁ、行こうぜ!道は険しくても、突き進め!世界を切り拓け!! We’re Sapporo!!
2016年08月20日
後半戦がスタートして早8試合が経過している。デスクトップPCを使っていることもあり、クーラーの利かない密室での記事作成に心が折れ涼しくなってからの活動再開となりました。前回の記事からひと月以上空いてしまい、心待ちに…してくれていた人が居たら嬉しいです。ということで、ここまでの後半戦で好調不調明暗分かれた各チームと、我らが北海道コンサドーレ札幌の現状を振り返ってみたいと思っております。それでは、お付き合いのほどよろしくお願いします。
まずご覧になっていただきたいのが、以下の順位表です。後半戦の8試合のみ抜き出して順位付けをしたものになります。
01位 札幌 △△○○○○●○ 勝点17 +9
02位 横縞 ●△○△○○○○ 勝点17 +4
03位 長崎 ○○○●○○●△ 勝点16 +3
04位 松本 ○○●○△△△○ 勝点15 +4
05位 清水 ○△●○○●○△ 勝点14 +7
06位 岡山 ●△●○○○△○ 勝点14 +4
07位 京都 △●○△△○△○ 勝点13 +3
08位 山口 ○○△△●○●△ 勝点12 +4
09位 水戸 ○○●△○△△− 勝点12 +3
09位 徳島 ○○●○△●△△ 勝点12 +3
11位 東緑 ○●○●○●○● 勝点12 0
12位 群馬 △●△○●○○− 勝点11 +2
13位 愛媛 △△△●○△△△ 勝点09 -1
14位 熊本 ●△○△●●△○ 勝点09 -2
15位 金沢 ●○○△●△●△ 勝点09 -6
16位 桜大 △○●●△●○● 勝点08 -1
16位 町田 ○●○△●●△● 勝点08 -1
18位 千葉 ●○△●●△○● 勝点08 -3
19位 讃岐 △●●○○△●● 勝点08 -5
20位 北九 ●●△△●△●△ 勝点04 -9
21位 岐阜 ●●●●●△△△ 勝点03 -10
22位 山形 ●●△●●●△● 勝点02 -8
自作ではなく、2chの「●●2016J1へ昇格するチームは?part18●●」から拾ってきました。非常に見やすいので引用させていただきます。失速が目立つセレッソ大阪、FC町田ゼルビアに対し、コンサドーレは着実にどころか引き離す勢いで勝ち点を積み上げ、後半のみの順位でも首位に立っている。引き離されまいと勝ち点2差で松本山雅FC、同3点差でファジアーノ岡山、清水エスパルスが追う展開。とはいえ、折り返し地点の接戦を考えると思いのほか差が開いてしまったという印象だ。その印象を裏付けるのが次の表だ。同じく、2chの「●●2016J1へ昇格するチームは?part18●●」から転載させて頂く。
J2上位陣星取表
札幌松本桜大京都岡山町田清水山口
札//○●○△○ー○△ー●○○○○26(残2)
松○●//●○ー○ー●○ーー△▲ー14(残5)
桜▲●●○//●△○ー●○ー○●○17(残2)
麿ー●●ー▲○//ー△○△○ー○△16(残4)
雉▲●○ーー●▲ー//▲ー▲ーー△08(残6)
町○ーー●●○▲●ー△//●ー●○11(残4)
清●●▲ー●ーー●ー△ー○//▲○08(残6)
口●●ー△●○▲●▲ー●○●△//10(残2)
上位8チームにおける直接対決の星取表だ。コンサドーレ同様1試合少ない勝ち点40の横浜FCと同37のV・ファーレン長崎が表には記載されていないが、後半戦から調子を上げプレーオフ圏内に殴り込みをかけに来ている両チームだけに、記載漏れも致し方ないだろう。残り2試合を残すだけのコンサドーレの上位陣との対戦成績は8勝2敗2分けで奪った勝ち点は26。同じく残り2試合を残すセレッソ大阪が5勝5敗1分けの勝ち点17に留まっていることから考えると、今季のコンサドーレの安定した強さが見て取れる。
後半戦でも維持されているコンサドーレの好調の要因は「選手層の厚さ」に尽きるだろう。オフの補強で獲得してきた増川隆洋、マセード、ジュリーニョ、ヘイスそれぞれ戦力になっているだけでなく、シーズン途中から加入した菊地直哉が更なるアクセントを加えている。7月9日のセレッソ大阪戦から進藤亮佑に代わりスタメンに名を連ね、さすが世代別代表経験者と言うべき視野の広さと技術の高さでコンサドーレ守備陣に安定感を与えている。進藤が対応に拙さを見せ始めている時期だったこともあり、非常に大きな補強になっている。
いつも参考にしている「football lab」のデータから引用し、進藤と菊地を比較したいと思う。「守備」の数値を比較しようと思ったのだが、どうやらこの数値は攻められば攻められるほど数値的に向上していくようなので単純比較が難しかった。ちなみに進藤は8.62、菊地は7.40となっている。そのため、視野の広さを比較する指標として「パス」の項目を参考にしたいと思う。進藤が平均0.88に対し、菊地は1.11だった。参考までに守備の要である増川の平均値は0.65、正確なロングフィードで攻撃を牽引する福森が1.62となっている。菊地に関して特筆すべきは、やはり視野の広さにあるだろう。「ここは相手を引き付けてパスを通す」であるとか、「ここはシンプルにフィードを入れる」だとかの判断が的確だ。この印象を客観的に裏付けたいという意味も込めての比較になったが、その印象通りの結果が出た。左の福森、右の菊地とパスを散らせる起点がDFラインに増えたことは、コンパクトな陣形を保ち相手を引き出して崩すコンサドーレにとって非常に大きな意味を持つ。
もう一人の嬉しい誤算が上里一将の復活だ。肉離れで離脱した宮澤裕樹に代わり、7月9日のセレッソ大阪戦からスタメンに起用された。途中出場となったジェフ千葉戦とは打って変わり、持ち味である大きな展開と強烈なミドルシュートで相棒である深井一希にはないアクセントを加えている。一番の変化がワンタッチでボールを捌くことを意識している点だ。安易に相手選手を背負うことをせず、ワンタッチで相手を交わし前線に数的有利を作り出す。ただ、この意識が裏目に出て最近ボールロストが目立ってしまっている。事実、前節のモンテディオ山形戦でも彼のボールロストから失点が生まれている。とはいえ、彼の活躍は目覚ましいものがあり、先ほど比較として持ち出した「パス」であるが、上里の平均値は1.72。他方、宮澤は1.81と遜色のない数値を叩き出している。激戦区のボランチであるが、頼もしい男の復活によりスタメン争いは目が離せなくなりそうだ。
他方不安な面もある。トップ下だ。今のコンサドーレのトップ下に求められているのは「キープ力」と「推進力」の2点だ。これを完璧にこなしていたヘイスが肉離れで離脱してしまったことが、コンサドーレの泣き所となりつつある。第28節の横浜FC戦。夏場の連戦ということもあり、ジュリーニョのベンチ入りも見送りジョーカーとして小野伸二、内村圭宏をベンチに入れて試合に臨んだ。トップ下に入った宮澤も奮闘したが、推進力を発揮するまでには至らない。その結果相手の苦しい時間帯に先制を許し、内村、小野とカードを切ったものの、「もうちょっと、良い距離とか、連動してやりたかった。(攻撃が)単発っぽい感じしかなかったので。」と内村が語ったようにスタメン出場選手だけでは打開することができなかった。ジュリーニョが疲労からか途中出場が続いている今、新星の登場が待たれるといったところだ。推進力なら荒野拓馬、キープ力なら宮澤裕樹。ブラジル人コンビ不在時にどのようにカバーしていくのか、四方田監督の悩みは尽きない。
ここまでコンサドーレの後半戦を振り返ってきた。改めて思うことだが、いつの間にこんなに選手層が厚くなったんだと戸惑いを覚える。FWやCBに一抹の不安を覚えるものの、元気一杯走り回る背番号9を見ていると、それも杞憂のように感じてしまう。J1に昇格したらとかは昇格してから考えることだ。まずは目標を見据えて着実に勝ち点を積み重ねていくこと。これが肝心だ。いよいよ週末には鬼門が大口を開けて待っている。灼熱の京都、西京極。この鬼の腹を食い破り、最高の結果を勝ち取ることを願っている。
2016年07月09日
夏の大阪アウェイに良い思い出はない。初めて遠征した2011年は春先の完勝とは程遠く、自力の差を見せ付けられた。唯一の救いである古田寛幸のJデビューも、試合後のゴール裏に飛び交うサポーター同士の罵声に掻き消され惨めな思いをしたものだった。夏の大阪。陽炎立ち上る昼間の熱気が晴れることなく、時折吹くやる気のない風がその熱気を運んでくる。乾くことのない汗が肌に纏わりつき、不快指数を上げていく。目の前で展開される試合も相まってか、目の前が真っ白になるほどの激情が込み上げ爆発する。長丁場であるJ2リーグの折り返し地点を向かえ、チーム力が問われてくる時期だ。そのため今まで牙を研いでいた本命と目されていたチームが一気に浮上してくる。そんな時期。遂に雌雄を決する時が来たのだ。7月9日、キンチョウスタジアム。5連勝、4連勝。そして前節5点ずつ取り合い準備万端整えた両チームによる首位攻防戦。日が暮れてなお暑い大阪の夜に、もっと熱い試合を見せてくれることになるだろう。
と、ここまで書いたのだが…。どうにも様子がおかしい。右足関節靭帯損傷で離脱したFW柿谷曜一朗の穴を埋め、3試合連続ゴールでチーム5連勝を支えてきたトップ下のブルーノ・メネゲウが中国1部の長春亜泰に完全移籍することが決定的という報道が出たのだ。報道に間違いはないようで、すでに全体練習にも参加せず9日のコンサドーレとの一戦にも出場しない見込みのようだ。セレッソ大阪大熊清監督はトップ下の代役に関し、「経験値なら玉田が主軸だし、ソウザや関口にキヨ(清原)。満(丸岡)もいるしね」と候補はたくさんいるとばかりに嘯いたが内心はいかばかりだろうか。柿谷の全治は4週間、負傷したのは6月9日と単純計算で行けばこれから始まる後半戦に間に合う見込みではある。とはいえ回復状況まではネット記事を検索する限りは伝わってこない。コンサドーレとの試合後、下位ザスパクサツ群馬を挟んでプレーオフ圏内を狙うFC町田ゼルビア、またカマタマーレ讃岐を挟んで京都サンガFCと気の休まらない試合が続く。その緒戦であるコンサドーレ戦に「ベストメンバー」で挑めないことは悔やんでも悔やみ切れないものがあるのではないだろうか。
とはいえ首位攻防の大事な一戦である。簡単ではあるが基本陣形を紹介していきたいと思う。セレッソ大阪は4-2-3-1を採用している。4バックを採用しているチームらしく、サイドアタックが軸になっている。左の丸橋祐介、右の松田陸はクロス数ランキングにおいて、丸橋5位松田7位とそれぞれリーグ屈指のクロッサーとしてセレッソ大阪の攻撃を支える両輪となっている。彼らからのクロスを待ち構える1トップには、長身187cmを誇るリカルド・サントスを据える。長らく「電柱」として活躍する時期が長かったが、近5戦で4ゴールとポストプレイヤーとしてチームにフィットしつつあるようだ。攻守の切り替えを担うボランチは人材豊富で、序盤のセレッソを支えてきた山村和也をベンチに据える余裕を見せ付けてくれる。ブンデスリーガから先日復帰し、スケール感を増したプレーで観客を魅了する山口蛍とコンビを組むのがソウザだ。183cmという抜群のフィジカルを活かしドリブルで前線にボールを運び、長短のパスを織り交ぜて攻撃を組み立てていく。まさしくセレッソの「心臓」ともいえる選手だ。総得点は31とリーグ屈指の破壊力を誇る攻撃陣に加え、加え…。日本代表の玉田圭司、関口訓充、ジーコイズムを体現するストライカー田代有三などベンチには錚々たるメンバーが名を連ねている。恐ろしい相手である。一体何点取られてしまうのだろう。しかもアウェイ大阪、不快指数MAXでスタミナを削られJ1レベルの攻撃力でコンサドーレの守備陣は引き裂かれてしまうのではないか…。
…ザルッソ。皆様はこの蔑称をご存知だろうか?3点取っても4点取ったら勝てるんじゃとは、青黒のチームを率いたマイアミの奇跡の首謀者の弁だったように思われる。どうにも大阪の2チームは得失点の出入りが激しいようだ。笊+セレッソ=?というわけで、セレッソのウィークポイントはセットプレーとクロスの守備にある。総失点数は20とリーグ6位と決して「ザル」ではないのだが、そのうちセットプレーで8、クロスで4と計12失点。つまり半分以上をクロスへの対応で失っているのだ。実際前節の熊本戦における1失点もクロスから喫している。これは間違いなくCBの田中裕介と山下達也、そしてGKキムジンヒョンの連携ミスから起きている。前半戦を終えようかという時点でも改善が見られていないというのは致命的だ。特にコンサドーレはセットプレーに強みがあり、すでに10点と全体の3分の1強。クロスからの7点をあわせれば17点と全33ゴールのうち50%強を占める。無論コンサドーレの守備にも弱みがあり、混戦からのこぼれ球を決められてしまうケースが散見される。前節の横浜FCイバの2点目がそれだ。こぼれ球を決められたのは4と全15失点のうち4分の1強を占める。シュート数でいけばおそらくセレッソに軍配が上がるだろうという今節。いかにゴールマウスに襲い掛かるシュートをブロックした上でこぼれ球を弾き出すか、これがコンサドーレ守備陣の課題となるだろう。
以上を踏まえた上でセレッソのキーマンを挙げるとすれば、左サイドバック丸橋祐介と中国へ移籍するメゲネウに替わりトップ下に起用されるだろう玉田圭司だ。無論セレッソの「心臓」ソウザも恐ろしい存在だが、彼の存在を消すためには前述した2名を封じる必要がある。セレッソの攻撃の軸を成すのがサイドアタックであるというのは先ほども書いた。コンサドーレもクロスからの得点が多いが、福森晃斗のクロス数はリーグ39位と突出した数字ではない。これに比べてセレッソの両SBから供給されるクロス数は丸橋5位、松田7位と明らかに偏重している。今回コンサドーレの右CBには先日J1サガン鳥栖から移籍してきた菊地直哉が入ることが濃厚だ。ボランチもこなしてきた元日本代表は今シーズン出場機会に恵まれなかったものの、昨シーズンは4バックの中心として活躍しサガンのJ1残留に貢献している。まさしく実績充分であり、左の福森と同様に高い足元の技術を活かしてサイドを活性化してくれるもとと思われる。マッチアップは杉本健勇だが、その後ろでは丸橋が虎視眈々と攻め上がりの機会を狙っていることだろう。加入してからまだ間もなく、石井謙伍や増川隆洋と連携面で不安があるものの報道を見る限り、練習中に彼らと距離感やボールを奪いに行くタイミングを何度も確認し改善を図っているようだ。増川も「声をよく出してくれるし、ボールを持ったら落ち着く」と手ごたえを口にしている。試合中の調整も勿論あると思うので、前半15分まではきっちりと右サイドに蓋をするように安全運転を心がけてもらいたい。今回のスタメンにはボランチ深井一希の相棒にベテランの上里一将の起用が予想されている。前寛之の怪我は残念だが、上里には上里の武器として「展開力」がある。前線には出場停止明けでエネルギーが有り余っている都倉賢と絶好調ヘイスのモンスターコンビが田中・山下のセレッソCBコンビに襲いかかろうと舌なめずりをしている。そこに福森と上里の裏を狙うロングフィードが届けば必然とセレッソのDFラインは下がらざるを得なくなるだろう。そうなれば攻め急ぐ前線と中盤の間にギャップが生まれ、コンサドーレ自慢の「深井過労死システム」が機能する。
セレッソもう1人のキーマン玉田圭司であるが、なぜ取り上げたかと言えば彼の交代タイミングが得点のチャンスになるからだ。第20節東京ヴェルディ戦。セレッソ大熊監督はトップ下に玉田を起用し、前節徳島ヴォルティスにあわやという失態を演じてしまったチームに梃入れを図った。だがこれが上手くいかず、前半に先制点をあげたものの攻撃は低調。そのため62分に玉田に変え藤本康太を投入しボランチに入れて守備を厚くするとともにソウザをトップ下の位置に上げた。しかしその10分後に、ボランチ山村和也に代えてFW澤上竜二を投入してソウザをボランチに戻しシステムを変更するなど手詰まりを露呈した。つまり中盤における攻守両面におけるソウザへの依存度が高いため、メゲネウが抜けた今トップ下の出来が試合結果にシビアに反映してしまう結果に陥っているのだ。選手配置を弄り、連携を確認する10分間これが得点のチャンスになる。もし、今節トップ下にソウザが入ったとしたらそれは好機と捉えるべきだ。はっきり言って今年のセレッソは昨年のセレッソではない。ドイツの空気を吸ったからといって新しいチームですぐに連携が上手く行き超絶パスが繋がるわけではないのである、誰とは言わないが。油断は禁物ではあるが、トップ下が穴になってしまった今節のセレッソは厳しい戦いを強いられることになるだろう。だからこそ、コンサドーレとしてはセレッソのサイド攻撃を封じ中盤にボールを集めさせたい。コンパクトな陣形を保ち、ボール奪取からショートカウンター。これぞサッカーの王道というべき美しい攻撃を魅せてくれることを願っている。
熱い試合になるだろう。諸事情がありテレビ観戦も叶わないが、リアルタイムで観戦できないことが残念だ。残念だと思わせるような試合を見せてもらいたい。夏の関西という呪縛を振り払い、5年ぶりのJ1へ向けて正念場が始まる。現地に行かれる方は熱中症に気をつけて、全身全霊魂を選手達にぶつけて貰いたい。きっと選手たちもあと一歩が出るようになるはずだ。We’re Sapporo!!
2016年07月06日
思わず声が出てしまった。予定が合わず函館での現地観戦は見送ったものの缶ビール片手のテレビ観戦。2点目のヘイスのゴールだ。荒野拓馬の左サイド突破からゴール前で待ち構えるヘイスにグラウンダーのクロスが飛ぶ。これを一度DFに寄せてからトラップし反転、落ち着いてゴールに流し込んだ。確かに荒野が左サイドを突破した時点でゴールのチャンスは限りなく高まっていた。とはいえヘイスの技術の高さには目を見張るものがある。1点目のジュリーニョのミドルを呼び込んだゴールへ向かい相手選手を惹き付ける動き‐相手選手が寄せていればシュートは防げていたとは思うが‐や、惜しくも南雄太に防がれてしまった後半のこぼれ球に反応したシュートなど自分の色を出せるようになってきた。開幕時より10kg近く身体を絞り、ここ5試合で3点と波に乗ってきた。そのうえで、ジュリーニョと近い距離でプレーさせるように腐心した四方田修平監督の手腕も見過ごせないだろう。
チーム得点王の都倉賢を出場停止で欠く中で5得点というのは文句のつけようがない。2失点については反省材料だが、4-0と試合の大勢が決まっていたので守備意識が甘くなってしまうのは仕方がなかったのかもしれない。なんにせよ4連勝で首位をキープした。下位に取りこぼさず上位3連戦に臨む事ができることを喜びたい。
3番勝負の先陣を切るセレッソ大阪は山口蛍が加入し、これを名将大熊清がどうチームに組み込むか手腕が問われている。直近のロアッソ熊本戦に5-1と大量得点で勝ち点を積み上げ、これで連勝は5に伸びた。思いも寄らぬ相手にぽろっと負ける「意外性」を持った今年のセレッソ。付け入る隙はまだまだあるはず。熱い夏はこれから始まる。
2016年07月02日
横浜FCに触れる前に、簡単に前節ザスパクサツ群馬戦を振り返っておこうと思う。1-0。いつものように先行逃げ切り。美しいウノゼロでの勝利で、コンサドーレは勝ち点を42に伸ばし首位をキープした。この試合で取り上げるべきはここ5試合で3ゴールと調子を上げているヘイスなのかもしれない。だが、私は右サイドハーフで先発出場した石井謙伍を取り上げたい。なぜか。それは私が考える群馬のキーマンを潰し切り、終わってみれば前半シュート3本と群馬に攻撃の形を作らせなかった功労者だからだ。
私の考える群馬のキーマンは左サイドの2名、SBの高瀬優孝とMF高橋駿太だった。高瀬はJ2最多クロス数を誇り、高橋は今季6ゴール6アシストを記録している。彼らをゲームから消してしまえば、群馬の攻撃は機能不全に陥る。そのためには右サイドでプレーする選手の奮起が期待されると、このように前回の記事で触れた。前回の記事で注目選手に上げたのは進藤亮佑であったが、石井のスピードに乗った再三のドリブル突破が彼ら2人を自陣に押し込んでいたと感じた。そしてキーマンの1人高橋を途中交代に追い込んでいる。攻撃の手を封じられた群馬は苦し紛れに中央にボールを戻すも、そこに網を張っていた深井一希、前寛之のダブルボランチがカットしカウンターに繫げ、最終的には後半25分福森晃斗のクロスからヘイスのヘッドがゴールネットを揺らした。下位相手ではあるが3連勝で勝ち点9を積み上げており、「強きを挫き、弱きを助く」と揶揄されたコンサドーレの面影はない。5年ぶりの函館開催で更なる弾みをつけ、後半戦セレッソ大阪から始まる上位3連戦に挑みたい。
そこで今節対戦する横浜FCについて分析してみよう。現在6勝8敗5分、勝ち点23でコンサドーレと同じく1試合少ないながらも12位に位置している。得点失点ともに20で得失点差0である。シーズン途中にミロシュ・ルス監督から昨年同様、強化育成テクニカルダイレクターを務めていた中田仁司が監督に就任。新監督となってからの2試合は1勝1敗となっている。基本的には前監督のサッカーを引き継ぎ、4-4-2のフォーメーションを軸としている。しているが、大きく変わったことがある。そう、キングカズこと三浦和良のスタメン起用である。御歳49歳と馬鹿にしてはいけない。昨年は3ゴールを挙げ、今年もスタメン起用に応え先発6試合で1ゴールを挙げている。彼とコンビを組むのが津田知宏。徳島ヴォルティス時代14ゴールを挙げ、四国勢初のJ1昇格の立役者となったストライカーだ。ただ近年不調が続き、ゴールを量産とはならないものの今シーズン3ゴールを決めており侮ることは出来ない。侮ることは出来ないが、小粒であることは否めないだろう。
そんな彼らを操るのがダブルボランチ。寺田紳一と佐藤謙介だ。チーム内のパス交換ランキングにはどちらかの名前が載り、彼らを介して横浜の攻撃が構成されているのが分かる。その攻撃に厚みを出すのがサイドハーフ。左の野村直輝、右の小野瀬康介だ。どちらも縦への突破から鋭いクロスを入れるクロッサーではあるが、その一方で貪欲にゴールを狙うアタッカーでもある。その証拠に、野村は2ゴール、小野瀬は3ゴール3アシストを今季記録している。実に4-4-2のサイドアタッカーらしい数字であると惚れ惚れしてしまう。
それだけではなく、横浜には切り札が2枚残っている。ツインタワー大久保哲哉&イバがベンチに控えているのだ。大久保、イバともに190cm。スタミナや守備の面に不安を感じるためベンチスタートとなっているが、後半の疲れた時間帯にパワープレーで出られるとどこのチームでも辛いものがあるだろう。しぶとく、粘り強く勝ち点を拾ってきている横浜FC。ホームよりアウェイで勝ち数が多いというところからも、なかなか侮れないチームであるといえよう。
そんな彼らにも泣き所がある。それは左SB不動のレギュラー田所諒の出場停止である。前節の町田ゼルビア戦でイエローカード2枚を受け退場となってしまい、今節は出場停止処分。先ほど取り上げたチーム内パス交換ランキングでも上位に位置し、また攻撃につながるラストパスもチームで上位に位置している。クロスもJ2で11位と攻撃のスイッチを入れてきたチームの中心選手である。その彼が欠場。代役として永田拓也が予想されるが、今季先発出場はなく途中出場も3試合と穴を埋めるまでは至らないだろう。
無論コンサドーレもチーム得点王の都倉賢を累積警告による出場停止処分で、ボランチの宮澤裕樹は肉離れで全治1ヶ月と主力を欠いている。ベストメンバーを組むことは出来ないが、その中で遜色ない試合を群馬相手とはいえ展開することが出来た。都倉のところに素直にジュリーニョを入れるか、それともヘイスをトップ下に置いたまま2トップの一角にジュリーニョを入れるか、はたまたジュリーニョはあえてジョーカーとしてベンチに置き荒野を先発で起用するか。四方田監督の悩みは尽きることがないだろう。私としてはヘイス・内村の2トップにトップ下ジュリーニョで試合に臨んで欲しい。というのは無論理由がある。連携が上手くいっていなかったシーズン序盤。途中出場で起用されていたヘイスはよくポジション取りで都倉と被っていた。現在は都倉がサイドに逃げ、空いたスペースをヘイスが使うことでバランスが取れている。都倉とポジションが被るということは、考えやプレースタイルが似通っていると考えることができる。そのうえで身体も絞れ、ゴールを決めて精神的にも安定している今の時期。ポストプレーヤーとしてどの程度通用するのか、改めてチェックするべきではないだろうか。ヘイスとジュリーニョという守備に不安を抱える2人を同時に起用することで、中盤にギャップが生まれカウンターのリスクは当然高まるだろう。だが、3-5-2対4-4-2であり中盤の人数はコンサドーレのほうが多い。生じたギャップを深井たちダブルボランチが勇気を持った飛び出しで埋めることができれば、ゲームの主導権は次第にコンサドーレに傾いていくだろう。
今節のキーマンとしては左サイドの福森晃斗をあげたい。小野瀬のサイドアタックをいなし、いかに攻撃を組み立てるか。正確なフィードが武器の福森であるが、自陣深くからでは魅力が半減してしまう。中盤に宮澤を欠く今、コンサドーレの攻撃を一手に担っているともいえる。シンプルにボールを捌き、前線で待ち構えるヘイス・内村・ジュリーニョに預けて彼らの攻撃センスに任せるのもまた一興だ。
どちらがサイドを制圧するかがゲームのポイントとなる。快勝になるか、泥仕合になるか。それは彼らの肩もとい脚にかかっている。幸いにも日曜日の雨は朝早くに上がり、日中に降雨の心配はないそうだ。1万人を超えるであろう函館のサポーターを飽きさせないような素晴らしい試合を期待したい。
とここまで書いていたのは昨日の話。どうやら荒野拓馬をトップ下に置き、ジュリーニョ、ヘイスの2トップになる模様。サイドも左に堀米悠斗、右に前節同様石井謙伍という布陣になりそうとの予想が出た。福森の前に攻守万能の堀米を置き、小野瀬のケアを彼に担当させるものと思われる。身体が強く、懐の深いプレーを垣間見せるゴメスのプレーが福森の正確なロングフィードを引き出せるか注目したい。その福森も結婚が発表され気持ちも新たに試合に臨む。「守る家族ができた。生活が自分にかかっていることを強く自覚していきたい」と頼もしいコメントも聞かれる。守備が課題であることも自覚し、「1対1の間合いが遠いところがあるが、最後は体を張れている」と粘り強く対応する意識を見せていた。横浜FCのウィークポイントはセットプレーとクロスである。総失点の75%を失っており、福森に掛かる攻撃の比重は大きなものになるだろう。だからこそ「一皮剥けた」New福森晃斗を僕らに見せ付けてもらいたい。
泣いても笑ってもこれが前半戦ラストゲーム-1試合少ないが-になる。気分良く後半戦、地獄の上位3番勝負を迎えるためにも笑顔溢れる試合結果になることを祈っている。
2016年06月26日
J1の1stステージは鹿島アントラーズが制した。フロンターレ悲願のタイトル獲得かと思われたが、経験の差か粘り強く勝ち点を積み上げたアントラーズに勝利の女神は微笑んだ。アビスパ福岡との対戦となった本日の試合、特に印象に残ったのは先制点のシーン。右からのCK、ゾーンで守る福岡ディフェンスを掻い潜り柴崎岳から送られたクロスに合わせたのが山本脩斗。直前のCKでもDFに阻まれたものの、上手く抜け出し競り合っていた。セットプレーは確実にモノにするという執念が感じられたゴールだった。また、このゴールは鬼が笑うと思われる方が多いが、来年コンサドーレが昇格した際に改善しなくてはならない点になると感じられた。アビスパ同様、コンサドーレもセットプレーはゾーンで守っているからだ。松本山雅FCに攻略されてしまう「程度」のセットプレーディフェンスではJ1上位に対し守りきることはできない。更なる連携の向上と選手のレベルアップが急務と感じられた。
ともかく、まずは目の前の一戦。ザスパクサツ群馬を倒すこと。これに尽きる。これに勝利し、函館での横浜FC戦そして後半戦開幕のセレッソ大阪戦に好調を維持したまま挑む。そのためには…ということだ。
それではザスパクサツ群馬の現状を確認してみよう。0-8と屈辱的な敗戦となった清水エスパルス戦以降、守備陣を建て直し3試合で負けなしと好調を維持している。とはいうものの1勝2分。対戦している相手も下位に低迷する北九州、熊本、長崎と正直「好調?」と疑問符をつけざるを得ない。2分の内容はビハインドを追いついているという点は評価できるが、先制を許したり逆転されたりと守備陣の不安定さを露呈している。「守備陣の建て直し?」という疑問符も付いてしまっているのが現状だ。
基本フォーメーションは4-4-2。すでに6ゴールを上げている瀬川祐輔と187cmの長身FW小牟田洋佑の2トップに、左サイドから飛び込むような形で今季6ゴールの高橋駿太が攻撃に絡んでくる。彼らを操るのがボランチのベテラン松下裕樹であり、J2最多クロス数を誇る左サイドバック高瀬優孝だ。特に瀬川は最近5試合で4ゴールと好調であり、同じく5試合で2ゴールの高橋と同様チームの攻撃を支えている。好調な攻撃陣と引き換えに失点が多く、総失点数31はツェーゲン金沢に次ぐ今季J2ワースト2位となっている。特に目立つのがセットプレーからの失点で、全体の3割近くにあたる9失点を記録している。他にはクロスから7失点、スルーパスから3失点、30m未満の細かいパス交換から4失点などとなっている。この失点傾向から考えると、コンサドーレとしては今までどおりワンタッチでのパス交換を重ねてゴールに迫りつつ、ゴール付近でファールを獲得して得意のセットプレーの機会を得るというのが勝利への最短コースと思われる。
この試合のキーマンとなるには、2試合ぶりのスタメン復帰となる進藤亮佑を挙げたい。理由としては、群馬の攻撃パターンが左サイドに集中しており、ここの攻略が試合のキモになりそうだからだ。特に群馬のチーム内パス交換ランキングの上位に顔を出す左サイドバック高瀬優孝を自陣に釘付けに出来れば、その1列前に布陣する今季6ゴール6アシストを記録している高橋駿太も守備に時間を割かれる時間が増えるはずだ。コンビを組むマセードとともに、彼らをゲームから消してしまうほどの活躍を期待している。
梅雨時であり日中の暑さが残る中で行われる今日の一戦。これからはこのようなタフなコンディションでの試合が増えてくるだろうと思われる。その中できっちりと下位から勝ち点を奪っていくという試金石になる試合であろうと思われる。1-0とは言わず複数得点を奪い、昇格へ向けてもう一段ギアを上げて行くぞという気合の入った試合をみせてもらいたい。
2016年06月21日
逃れようと、もがけばもがくほど纏わりついて来る蜘蛛の巣のようだった。なんのことはない。ギラヴァンツ北九州の「ドン引き」ディフェンスのことだ。首位のチームに対抗するには正しい対処法と言えよう。まず守備を固め、ホームということで攻勢をかけてくるなら隙を突いてカウンター。池元友樹、原一樹という強力2トップは数少ないチャンスをモノに出来る優れたスコアラーだ。この彼らの術中に嵌ってしまい、コンサドーレは難しい試合を強いられることになる。
個人的に試合中、注意している点がある。この展開が増えると「嫌な展開」「攻めあぐねている」というチェックポイントがあるのだ。それはCBを起点とした攻撃構成。いわゆるロングフィードだ。この試合で言えば増川隆洋が攻撃の起点となる展開が多かった。ギラヴァンツの素早い帰陣の結果、コンパクトな陣形を保つため最終ラインがセンターラインまで上がってしまったコンサドーレ。DFライン裏のスペースも埋められているうえ、狭い陣内に総勢20名の選手が押し合いへし合いしている所に効果的な楔を打ち込むのは試練の技だ。その大役を担う破目になった増川には同情を禁じえないが、どうしてもコンサドーレが攻めあぐねる展開は河合竜二や増川の「どっせい」フィードが目に付く。あくまで個人的に呼んでいるだけで意味はない。ただ、河合の某Dダックのような大きな足で蹴り上げると「どっせい!」って声が聞こえそうじゃないですか?気のせいですか?そうですか…。
引かれた場面における展開力については四方田修平監督も懸案事項として捉えている様で、試合後の会見で「相手が守りを固める中で、どう自滅せずに戦うかというところをテーマにしていました。うまくいったところもありましたが、ピンチを作ったところもありましたし、引かれた場面の崩しの質をもっと高めていく必要があると思います。」と反省の弁を口にしている。
ただ、この試合について実際にピッチに立つ選手たちは「無失点」というところにこだわりを持っていたようだ。今季初ゴールが決勝点となった宮澤裕樹は「決勝点となった得点については、素直にうれしい。今季初得点だったが、取るのであればチームが苦しい時に取りたいと思っていた。」と得点について喜びつつも「無失点で勝てたことも大きい。」と語った。その上でチームが好調の理由を「やはり今のうちのチームは、良い守備から良い攻撃に移るというところがベースになっていて、チーム全体で良い守備ができていたことも勝利の大きな要因だと思う。」と分析して見せた。その守備を預かるDFリーダー増川隆洋も「ここ最近は失点も増えていて、それも先に取られることが続いていた。やはり先制を許してしまうと、そこから逆転をするのは簡単ではないので、やはりまずはしっかりとした守備をするというところから試合に入った。」と守備的に試合に入ったことを認めている。最近の試合と比べてパススピードの遅さが目に付いた北九州戦だったが、安全策を取ったがうえに招いてしまった結果だったのかもしれない。
気になる点をあげればキリがない。都倉賢、内村圭宏の2トップのシュートが0本であるとか、ヘイスが我を押し過ぎてトップ下としては物足りない出来だったとか、守備に軸足を置き過ぎて櫛引一紀とマセードの連携が合わなかったとか。反省材料が得られることは良いことだ。だが久しぶりに「なんとなく」勝ったからこそ、勝って兜の緒を締めよ、だ。
次週は長崎、北九州に続き、またしても下位に沈むザスパクサツ群馬が相手。今年のコンサドーレは「強きを挫き、弱きを助く」と揶揄された下位への取りこぼしは鳴りを潜めている。とはいえやはり油断は禁物。梅雨時の関東地方は不快指数がうなぎのぼりだ。ねっとりと纏わり付くぬるい湿気が選手たちの体力を奪っていくことは想像に難くない。いかに先制点を奪い、アウェイの地で逃げ切ることが出来るか。群馬戦はそこがキーポイントになりそうだ。
2016年06月10日
「ボランチ」。ポルトガル語で「ハンドル」、「舵取り」を意味するこの戦術用語はいつの間には市民権を獲得し、「ゲームの司令塔として攻守の切り替えや絶妙なパスを送る役割」だと理解されつつある。彼もしくは彼らのパフォーマンスが試合の趨勢を左右し、ゴール裏から声を嗄らす僕らの喜怒哀楽までもコントロールする。それゆえ松本戦に宮澤裕樹が出場できなかったことが悔やまれる。たらればで発言する愚をあえて犯す。宮澤主将が出場していたならば、試合結果はどうあれ前半は最悪でも1失点で終わっていただろう。
なぜこのように考えるのか。前節の千葉戦では稲本潤一の負傷交代からバランスを崩したのは、中盤でボランチ堀米悠斗が落ち着きを欠いたからだと考えている。勿論フォローするべき上里一将がいささか観念的主観的ではあるが、ふがいなかったからだと断じることも出来よう。実際上里自身が試合勘を欠いていたと認めているのだから。それでも自身の果たすべき役割を見失い、どっちつかずの対応を取り、DFラインの前にスペースを与えてしまったのは「ボランチ」の責任である。これは松本戦でも繰り返された。この試合を動かしたのは松本FW高崎寛之だった。前半23分、コンサドーレDF進藤亮佑が与えたファウルによりFKのチャンスを得ると、ペナルティエリア角の手前でキッカー宮阪政樹からのクロスをニアサイドでフリーになった高崎寛之がうまく頭で流し込み、札幌ゴールを揺らす。コンサドーレのセットプレーにおける弱点を衝いた、ある種松本のスカウティングの妙が色濃く出た素晴らしいものだった。ファウルを与えた進藤は「クリアなど大人のプレーをしないといけなかった。(FKは)ゾーンDFの盲点をつかれた」と反省を口にする。高崎はセットプレー開始時点からフリーであり、セットプレー時にはゾーンで守るというのが今季のコンサドーレの方針であるのは重々承知だ。だが、「もし」マンツーマンであれば増川隆洋あたりがビッタリとマークし自由にさせなかっただろう。その結果別の選手がフリーになるなど弊害は勿論あるが…。また、都倉賢やジュリーニョが近くにいたが、彼をマークするまでは至らず、あっさりと他の選手に釣られフリーにしてしまった。キック直前GK金山隼樹が一声かけてチェックを促していればと思うが、映像からは金山がどのように対応したのかうかがい知ることは出来ない。昨年よく見られたセットプレーの守備という弱点が顔を出した苦い失点となってしまった。
2点目も狭い局面で押さえられず、サイドチェンジを許し後手後手を踏んだ結果の失点となった。後半セットプレーから都倉の2得点で追いついたものの、ゴール前で2対2の局面を作られるなど松本の攻撃の理想形を体現してしまった。その結果力尽き2-3で敗戦。無論、四方田修平監督は「後半追いついた後に引き分けでOKとはせずに、3点目を取りにいく戦いをした。(相手に)素晴らしいゴールを決められて負けたが、積極的に戦ったことに悔いはない。」とある程度リスクを承知で選手たちを送り出したと認めている。その上で。「局面で勝っていたこと、都倉が2点を入れて同点にしたことを評価したい」と試合を総括した。開幕から13試合で6失点だった札幌がここ3試合で6失点である。2試合連続で前半に2失点しているのが気がかりな上、サイド攻撃を起点とした失点が多く、GK金山も「クリアした後を奪われて失点している」と課題を口にしている。2試合連続で先制点を奪われ嫌が応にもリスクを取らざるを得ない状況に陥っている。どのように守備を改善していくのか、DFラインをまとめる増川はこう口にする。「苦しい時期は必ずある。こういうときに崩れないチームが強い」。失点にばかり目が行くが、攻撃陣は好調で3試合で7得点だ。決して悲観することはない。どのようにリスクマネージメントをし、最高の結果を得るか。今年のコンサドーレはこれが出来るチームだと思っている。勝利をもぎ取った松本山雅FC反町康治監督は試合後の会見で、J1で戦った昨季開幕戦を例に引き「昨季の開幕戦(名古屋戦)もこんな感じの展開で、向こうもなりふり構わずやってきて苦労したわけですが、そう思うと札幌さんはすでにJ1に値するチームだなと感じましたね。」と上から目線なのが鼻に付くところであるが、一定の評価をコンサドーレに対し与えている。古くはアルビレックス新潟、湘南ベルマーレと戦術家として率いたチームをJ1に送り込んできた彼からの評価はありがたく受け取りたい。
次の相手はV・ファーレン長崎。策士高木琢也監督はおそらく松本の戦術を参考にし、コンサドーレ対策を練り上げて札幌ドームに乗り込んでくるだろう。正念場が続くが、まだ首位である。しかも1試合少ないのも関わらずである。目の前の試合を着実に乗り越え、最高の結果を掴んで欲しい。
2016年06月08日
「今の札幌に勝てるのは松本しかない」松本山雅FC、DF當間建文はこう語る。勿論「首位だけに勢いがあるが」と札幌をリスペクトしつつも、3連勝でホーム「アルウィン」に首位北海道コンサドーレ札幌を迎えるに当たり、思わずこぼれた本音かもしれない。成績は8勝5分3敗 VS 10勝3分2敗と差はあるものの、得点は22 VS 20、失点はお互い9とJ2最小タイと堅守を誇る。まさに雌雄を決する一線の様相を呈している。
それでは松本山雅FCの陣容を確認してみよう。基本フォーメーションは3-4-2-1。1トップを務める188cmの長身FW高崎寛之は得点こそ3点に留まるものの、懐が深くボールを収め2列目以降の攻め上がりを促す厄介な相手だ。また、ボールを収めるだけでなくドリブルでペナルティーエリアに侵入しファウルを誘うなど老獪なプレーを見せる。いうなれば松本の「都倉賢」だ。彼の作ったスペースを活用するべく猛進してくるのが、右WBの田中隼磨と2列目のMF工藤浩平だ。数値的にもチームで1,2を争うドリブラー。特に田中隼磨は勢いそのままにサイドを抉り鋭いクロスを上げ、中央で待ち構える高崎ら長身FWが仕上げをする。FWが落としたボールに反応するのが2列目の工藤浩平だ。チームトップの4ゴールを上げるだけでなく、アシストも2つ記録するなどラストパスの出し手としても侮ることが出来ない。彼ら3人だけでも充分に恐ろしいのに、その彼らを操る存在がいる。それがボランチの宮阪政樹だ。今年モンテディオ山形から移籍してきた26歳のファンタジスタは、すでにチームの中心に君臨している。前述の田中隼磨と同様、パスの受け手出し手として攻撃に顔を出し牽引している。彼のタクトに応え、ロングボールやサイドチェンジを基本とした「緑の津波」と言うべき縦に早いカウンターが炸裂する。また宮坂はセットプレーのキッカーとしても精度の高いクロスを供給しており、総得点20点のうち8点がセットプレー絡みのものだ。加えてフリーキックだけでなく、スローインまでも得点のチャンスに変えてしまうのが松本の特徴だ。今季から大宮アルディージャに移籍してしまったが、「人間発射台」岩上祐三から引き継がれた「弱者の戦法」は健在である。少しも気を抜くことができない相手である。そんな「山雅四天王」とも言うべき高崎、田中、工藤、宮坂がコンサドーレの前に立ちふさがっていると言えよう。
対するコンサドーレは松本とどう戦うべきか。まずは不安材料だ。なんといっても3人のCBで1トップを見るというアンバランスさだ。基本的に守備に必要な選手の数は「相手の攻撃の選手の数+1」と言われる。つまりカバーリングの選手が「+1」の部分、あとはマンツーマンでマークということだ。そう考えればどうしても1人余る。そして暇があれば試していただきたいのだが、コンサドーレの基本布陣3-4-1-2と松本の基本布陣3-4-2-1を紙に書き出し重ね合わせてみて欲しい。するとコンサドーレの両サイドに大きなスペースが生まれているのが分かるだろう。1トップの高崎に対しCBトリオが互いに声を掛け合い、GKからのコーチングを参考にしながらスライドを徹底しなければ、このスペースを田中や工藤に良い様に使われてしまうことになる。これが守備面での不安。そしてもう一つの不安が攻撃面、トップ下に君臨するジュリーニョに関してだ。まだ手元に重ね合わせたフォーメーション表があれば見ていただきたい。お気づきだろうか。トップ下に位置するジュリーニョの周りを松本の選手が4人、彼を取り囲んでいるのだ。工藤、宮坂と攻撃のキーマンが4人に含まれているとはいえ、ジュリーニョの自由度合いはかなり制限されてしまうだろう。いかに彼のマークを外すか。チームの連動性が問われてくる。
以上を踏まえた上で改めてコンサドーレはいかに戦うべきか。基本的には中盤での潰し合いになるだろう。出足の早いプレスから宮坂、工藤を自陣に押し込んでしまう。そうすれば前線の高崎にロングボールを放り込むしかなくなり、DF陣の高さに分があるコンサドーレにとって対応しやすくなるだろう。無論先ほど述べた守備スライドを徹底した上でだが。この点から言えば、コンサドーレのキーマンは高崎とマッチアップするであろうDF増川隆洋と攻守の要MF深井一希になるだろう。彼らがコンパクトに陣形を保つことが出来れば、そう易々とスコアが動くことはないだろう。これに加えて攻撃陣のキーマンを上げるとすれば、石井謙伍、マセードの両WBではないだろうか。彼らが4人に囲まれるジュリーニョのフォローに入ることが出来れば、独特の攻撃センスを持つ彼のことだ、思いも寄らないようなアイディアで松本ゴールを脅かすだろう。また4人に囲まれるということはドリブル突破の際にファウルを貰う可能性が高まることも意味する。松本の9失点のうち4失点はセットプレー絡みだ。相手ゴール近くでファウルを獲得すれば、コンサドーレには福森晃斗がいる。彼の左足からのクロスに待ち構えるのは4試合連続ゴール中と絶好調の内村圭宏、そしてフィジカルモンスター都倉賢だ。この2枚看板は松本にとっても脅威だろう。惜しむらくは鼻骨骨折の恐れがあるということで怪我明けの宮澤裕樹が試合に出られないことだ。ベストメンバーではないが、誰が出ても試合のクオリティーが落ちないのが今季のコンサドーレの特徴だ。前節に引き続きボランチでの出場が予想される堀米悠斗には、「このポジションは俺のもんだ!」というような気迫とより一層の奮起を期待したい。
連勝中の相手。アウェイの地。勝ち点1を持ち帰れば充分と考えるのは当然だろう。ここで四方田監督がどのように松本戦を捉えるかがポイントとなってくる。引き分け上等なのか、それとも勝つしかない試合なのか、あわよくば勝てたら良いななのか。どのようにリスクを管理し選手を運用するのか。こんな面白い試合を平日ナイターに持ってきてしまった今年の日程くんに苛立ちを覚えるが、一方で面白い試合になるように今までの試合日程を組んできたのかと考えると舌を巻く。はたしてどんな試合になるだろうか。なんにせよ、見ごたえ充分の試合になることは間違いなさそうだ。
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プロフィール
98年J1参入決定戦に敗れ涙に暮れる札幌サポを見たことで、コンサ愛に目覚めた非道民。 何の因果か札幌に居を構え、試合結果に1週間のテンションを左右される日々。 いい年こいてまだ中二病が完治していない。 思い出とコンサの試合と日常をミキサーに投げ入れて、味の素で整えた文章を提供していく。 ご笑覧いただければ幸いだ。
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