2006年08月17日
日本クラブユース選手権U-18(7月28日~8月5日・於Jヴィレッジ、三ツ沢球技場) コンサドーレ札幌U-18はチーム結成以来10年連続10度目の同大会への出場を果たしたが、今夏の全カテゴリーの中で最も残念な結果に終わってしまった。 「残念」とは単に0勝2敗1分でグループFで最下位に終わってしまったという数字として残されたものだけではなく、今後のチームあるいは個人としてどれくらいの課題を持ち帰ることが出来たかも不透明ということを表している。 言うまでもなくユース年代の選手たちは皆発展途上の選手である。理想のサッカー選手として完成に近づいていくための成長の糧となる成功体験と課題の抽出を、その時点時点で経験していくことが大切なのである。その前提となるのは今現状の力をすべて出し切るということだ。出し切るからこそ勝利した場合は喜びや達成感も大きいであろうし、敗北を喫した際にも真に自分たちに足りないものは何なのかがわかる。 U-18は筆者が観戦した最初の2試合でいずれも完封負けを喫したが、勝敗はともかくどう見ても今年のチームは「出し尽くした」ようには見えなかったことが気にかかる。カテゴリー的にはプロ契約のトップチームのすぐ下に位置し、「アクション&ムービングサッカー」を踏襲するべきところなれど、試合を見る限りはその片鱗を感じ取ることも難しかった。ボール支配率でも劣り、シュート数でもグループリーグ3試合すべてで相手を下回ってしまっている。 総じて積極性が足りない。「同じ絵」を描けない。現地の気温が3試合を通じ21~23℃という低温下であったことも本来は札幌にとって優位に働くはずが、味方につけることもできなかった。<札幌-神戸戦より> <札幌●0-1○ジェフ> <札幌●0-4○神戸> <札幌△1-1△名古屋> 第一戦のジェフ戦についてはこちらに、神戸戦に関してはこちらにそれぞれ記事があるので参照されたい。 最終戦となった名古屋戦は観戦できなかったが、ようやく積極性が顔を覗かせたという。その甲斐あってかグループ勝ち抜けの可能性もあった名古屋を相手に、先制されながらもロスタイムに追いつきドローに持ち込むことが出来た。 スタッフの話を総合すると、5位に沈んでしまった北海道プリンスリーグからの悪い流れを断ち切ることができなかったようだ。力量的には道内2種チームの中で5番目とは思えないのだが、勝てる試合を勝ちきれず、引き分けに持ち込めそうな試合であと1点が奪えないといったことが重なっていったとのことだ。 この要因のひとつとしてセットプレーからの得点の激減が指摘できる。昨年は総得点の半分近くあったセットプレーからのゴールが、なんと今年は0点に終わってしまったらしい。対戦相手が丹念に研究してきたせいもあるのだろうが、プレースキッカーや得点感覚に優れた選手(例えばトップチームにおける池内など)の不在が響いたと言える。確かにJヴィレッジにおいても幾度かコーナーキックやフリーキックの好機は得たが、いわゆる「ゴールの匂い」を感じ取ることはできなかった。結局グループ3試合で1得点は参加24チームで最少の数字だ。
<札幌-神戸戦より> 現在の3年生の主力の多くは3年前に高円宮杯全日本ユース選手権U-15で準優勝を収めた当時の札幌ユースU-15のメンバーで、更にその中の数人は6年前に札幌FCにおいて全日本少年サッカー大会で準優勝と、2度も全国の頂点まであと一歩のところに迫っている。高校2年生で迎えた昨年の高円宮杯U-18の準優勝を加えれば3度だ。つまりそれだけ彼らは長期にわたって札幌あるいは北海道のサッカー界が大きな期待を込めて見守ってきた黄金世代だったのだ。 昨年、あれよあれよと言う間に準優勝という望外の結果を残してしまった高円宮杯全日本ユース選手権U-18を経て、ひとつの達成感を味わいすぎてしまったのだろうか。毎年選手が入れ替わる高校生チームで安定した成績を残すことは確かに難しいことではあるが、せめて鮮明な印象を残してくれる「個」の萌芽にこれからでも期待をかけていきたい。昨年も夏はいまひとつの成績に終わったが、藤田征也、西大伍、川村賢吾らの急成長によって実りの秋を迎えることが出来たのである。今秋はその高円宮杯U-18への出場が叶わぬものの、Jユースカップで成長の確かな証を見せてほしい。 (以下次回)