(前回の続き)

その蕎麦屋はとても狭く､４人がけのテーブルが４つと奥に４畳半ぐらいの
座敷があるだけだった。客はおらず、店主らしきオヤジが座敷でテレビを
見ていた。テレビの中ではお笑い芸人たちが卓球に興じている…

『この番組、先週見たような気が…』と
思いつつ席につくと､オヤジは突然テレビのチャンネルを変え､オイラに
お茶を出すと､厨房の中に消えていった。

鴨せいろを注文し､ニュース番組を眺めつつしばし待つ。
数分後､注文の品を持ってきた店主は、座敷に戻ると、オレの仕事は終わった
とばかりにリモコンを操作して、さっきの続きを見始めたのだった。

さっきの続き...そう、オヤジはビデオに録画した番組を
見ていたのだ。そして蕎麦を茹でる間だけ再生を止めていた...

どんだけマイペースなんだよ、オヤジ

オヤジは客のことなど気にも留めない風でけらけら笑ってる。
オイラが蕎麦を食い終わった頃､テレビの中では卓球に負けた芸人たちが
パンチパーマをかけられた頭を晒していた。